「魚が釣れなかったから、つまらなかった」
そんな体験をお持ちの方は少なくないでしょう。
バスフィッシングにおいてはむしろ釣れない人の方が多いものと思われ、ビギナーがYouTube片手に「このルアーで、こうやれば釣れる」を実践してみたものの、「釣れない」=「つまらない」=「続かない」の急坂を転がり落ち、去っていってしまうのを頻繁に目にします。
理由の一つには、産業に関わる構造的なねじれや生態系に関する理解不足、マナーの不徹底など複数の要素が負の掛け算を産んだ結果ブラックバスが減少の一途を辿り、結果的に「そもそも釣りにくい(タフな)魚になっている」という現実があります。
一方で、「巨大なブラックバスを釣ること」は、SNSなど存在しなかった40年以上も前から、廃れることのないムーブメントとしてその火を絶やすことがありませんでした。なぜでしょうか?釣れやすい時代もあれば釣れにくい時代もあり、そこには単に「釣れる=楽しい」という図式だけではすまない何かがあったと考えられます。
それは一言で言えば、「釣るための正解があるにもかかわらず、向き合うたびに心地よいほどに裏切られ、いつも新鮮な驚きをもたらしてくれる魚である」ということに尽きるでしょう。
中でもトップウォーターというスタイルは、一匹出ればサイズは50センチオーバー。しかしその一匹には出会えない可能性も高く、極度に不安定でゲーム性が高い「アンチ予定調和フィッシングの王様」であると言えます。ダメだと思いこんで振りかざした最後の一投に、水面を割って現れる巨大魚の姿を見る感動は他の釣りとは比べものになりません。
「釣れるか、釣れないか。その二元論から自由になったとき、そこには意味のある時間が流れているか」
“フィッシングギア・レーベル”という聴き慣れない概念を提唱する我々の着眼点はここにあります。
多くの人にとって、その日の大半を占めるであろう“釣れない時間”こそ、メインディッシュにすべきものであると。
日本には美しい自然とそれらが見せてくれる四季おりおりの表情があり、フィールドで水面にルアーを投じる我々が感じる時間には、一瞬たりとも同じ「時」はありません。
夏の夜明け、朝もやの中で上昇してゆく水温に躍動しはじめる野池の波紋。 冬のガラスのような湖面が、強烈なバイトをくらって叩き割られた瞬間の衝撃。
意味のある時間は、すでに我々の目の前に広がっています。
多様な個性と技術を持ったクラフトマン、ビルダー、先人ブランドとのコラボレーションを、時に直感的に、時に横断的に企画プロデュースすることを通して、“Surface Moment”を全ての人にひらく。
万が一釣れてしまった時には、大きな声で「出た!!!」のひとことを!Label for Surface Moment. NoisyNuts.
齋藤 久師
FOUNDER/CREATIVE DIRECTOR
音楽家/アングラー
1968年生まれ
1991年に『GULT DEP』でビクターエンターテインメントより音楽家としてデビュー。
2013年より「galcid」をプロデュースし、アメリカDetroit Underground™️よりアルバムをリリース。2016年2月には、日本文化庁主催のメディア芸術際@インド・ムンバイに召集され、日本を代表するメディアアーティストとなる。その即興電子サウンドはカール・ハイド(アンダーワールド)、ダニエル・ミラー、クリス・カーターなど世界の才能達から絶賛を受け、坂本龍一氏がディレクションするSKMT picksにgalcidの曲が選ばれるなど世界的な評価を受ける。
2019年にはドイツの老舗テクノレーベル「Force Inc.」や「Mille Plateaux」他、世界中の10のレーベルから多くの作品をVinylでリリース。
作品以外のことについては無趣味とも言えるほど音楽人としてのキャリアに没頭してきたが、四十歳を目前にトップウォーターフィッシングスタイルの強烈なフェティシズムの世界に取り憑かれ、以来、音楽家でありながら、その人生をトップウォーター・フィッシングに捧げることを決意。
年間200日以上というストイックな釣行の中で数えきれないランカーサイズを釣り上げ、14年の月日を経て遂に“NoisyNuts”を立ち上げた。齋藤にとっての釣りは、ゲームでもスポーツでもなく、瞑想である。
松井 浩太郎
PRODUCER/CREATIVE DIRECTOR
ポルタメント(株)代表取締役/アングラー
1976年生まれ
京都大学農学部で生命科学を専攻する傍ら、90年代に学生たちで創業したWebシステム開発企業でデザイナーとして活動し、2000年(株)電通入社。
デジタル広告産業の立ち上げに尽力したのち、「音楽を中心としたカルチャーを企業のコミュニケーションに活かすこと」を主眼に国内外のクライアント企業と前例のないプロモーションを多数世に送り出す。
主なものにLEXUS presents FREEDOMMUNE ZERO (2013)、EMPORIO ARMANI on block.fm(2015)、PERRIER presents LANTERN FEST(2017)、INTERSECT BY LEXUS音楽コンテンツディレクション、ポルシェジャパン70周年企画(2018)、Scopes driven by PORSCHE (2019)などがある。
2020年 PORTAMENT, Inc.を設立。トラディショナルな企業からスタートアップまで、ブランドコミュニケーションにまつわる企画立案とプロデュースワークを生業とする。
独立を機に30年ぶりのバスフィッシングに没頭するも一向に釣れないまま引退の危機を迎えた2020年秋、爆釣の限りを尽くしていた齋藤久師と邂逅しトップウォーターの道へ。2022年、フィッシングギア・レーベルという概念を発案する。
現在は東京都渋谷区ポルタメント本社と山梨県河口湖町支社をカヤックカートップの富士山ナンバー車で往復しながら事業開発を推進。